投稿

12月, 2021の投稿を表示しています

7日目の出来事ー4

 ・業者の方とあいさつして、どうやって室内を確かめるのか話そうと思ったら、「鍵、あります?」と一言。鍵を渡すと、「じゃあ、私がまず見ますねー」と鍵を開け、どんどん入っていく。 ・慌てて後に続こうとしたら、「ちょっと待って、私がまず見ますから」と言って、玄関に留められた。中から、体験したことのないような匂いがやってくる。いつもしているマスクを2枚重ねていたが、ほぼ役に立たない。 ・「あー、ここですね。タオルか何か掛けておきましょうか?」という声が。やはり現場は直視するのには耐えがたい状況のようだ。「フローリングって聞いてたんですが、畳ですね」。 ・奥さんが不動産屋のサイトから得た情報が違っていたらしい。フローリングなら、多少なりとも簡易な方法で掃除をすることも可能だったようだが、畳だと体液が染み込み、畳ごと廃棄しないとどうしようもないそうだ。 ・「下の板まで行ってるでしょうねー、この状態だと」。経験豊富なことをうかがわせる見立てである。 ・どうするか、一瞬迷ったが、ここまで来た以上、何らかの成果は出さないといかん。奥さんとも図り、回収できるものは回収して帰ることにした。財布、スマホなどは警察が押収(というのかな)しているので、玄関付近に放置されていた郵便物や銀行、生命保険などの書類を探した。 ・探しながら、不動産屋に頼まれていた現場写真を撮る。鑑識係かよ俺は。室内は相当乱雑だった。警察の捜索が入った後とはいえ、こういう部屋で暮らしていたのかと思うと、ちょっと辛くなった。その後、どんどん辛くなっていった。

7日目の出来事ー3

 ・何か所か連絡すべきところがありやり取りを済ませたところで、とりあえず少し厚みのあるポリ袋を何枚かと、同じくポリの手袋を車に積み込み、妹の部屋偵察に向けて出発する。 ・紹介してもらった業者の方とは現地で1930に待ち合わせ。その前に不動産屋に立ち寄る必要がある。通常なら車で1時間ちょっとの距離なのだが念のため2時間前には家を出る。 ・しかし退勤ラッシュの時間にぶち当たり、各所で渋滞が発生し予想外に時間がかかる。不動産屋の終業時間に間に合うか気が気ではない。もう少し、というところまできてお店に電話。到着まで待っていてもらうことにした。 ・お店につき、鍵をもらう。妹のアパートの契約には万一の時の修復費用や退去後のリフォームを賄う保険契約が含まれているとのことだったが、保証金額の詳細がこの時点ではわからない。確認を依頼し、約束の未払い分の家賃を払って現場に向かう。 ・業者の方との待ち合わせまでには少し時間があった。現場近くで見つけたスタバに入り、コーヒーを飲む。奥さんは「少し食べておく」といってパンを注文。よく食べられるなと思ったが、「現場見たら食べられなくなるから」と。なるほど。 ・現地には一度だけ妹を乗せて車で物を運んでやったことがあるが記憶があいまいだった。アパートの近くに車を止めるスペースがあるかわからなかったので、少し早く店を出る。 ・住宅街なので心配したが、コインパーキングが見つかった。そこに駐車し、歩いて現場に向かう。徒歩で訪れたことはなかったので少し迷ったが、無事現地についた。外から見る限り異常はない。 ・待つことしばし、業者の方がやってきた。思っていたより若い方だった。

7日目の出来事ー2

 ・一応、不動産屋さんに未払いの家賃の振り込みができなかったこと、後程伺ったときに現金で支払うことを伝える。その時、「清掃やリフォームをお願いする業者に見積もりをするので、写真を撮ってデータを送ってくれませんか」ということを頼まれた。 ・一瞬、「それってこっちがやることなのか?」と思ったが、担当の方がさも当然のように言うので、思わず引き受けてしまった。 ・病気とは言え、人が亡くなっていた現場である。写真を撮っても大丈夫だろうか。写真に何か移っていたらどうすべえ。奥さんに相談しようと思ったが、拒否反応があることが予想されたので、デジカメをバッグに入れた。 ・スマホでも撮影は可能だが、何となくつながっている感があって気が引けた。怪しげなものがネットワークを伝ってやってくることもないだろうが、どうしてもそんなことを考えてしまう。 ・未体験のことが次々起こる毎日。ダメージは精神的な部分にも出てきていたのだと思う。

7日目の出来事ー1

 ・あまりにいろいろなことが起きるので、対応できないことがこのあたりからぽつぽつと出始めていたのがメモを見るとわかる。 ・一つが、妹のアパートを管理していた不動産屋から頼まれていた、未払いになっていた家賃の振り込み。契約時に、知らなかったとはいえ私の名前が保証人の欄に記入されていたので、こればかりは仕方がないと考え承諾していた。 ・振込先も聞いていたので、なんてことはないタスクだったのだが、関係各所との連絡など緊急の案件があるとどうしても後回しになってしまう。本人としては後回しにしている気はさらさらないのだが。 ・この日、妹の部屋を訪れる前に鍵を借りにお店に行かねばならない、ということもあり、心のどこかに「その時でいいや」という気持ちがあった。それが後回しの原因になっていたのだと思う。 ・午前中は、仕事関係の連絡、家賃分の現金の引き出し(結局準備してないのである)などを行い過ごす。 ・午後は、その日に着ていくものをどうするか、妹の部屋に入って汚れたり匂いが付いたりした服をどうするかなどを一応奥さんと考える。「一応、業者さんが掃除をしてくれるっていうから、大丈夫じゃない」と考えていたが、甘かった。 ・実際に経験してみなければわからないということは、あるのだ。

6日目の出来事ー3

 ・明日からの動きに備え、連絡先など整理しておくことにした。父母の葬儀でお世話になったお寺の住職さん。まさかこんなに早く葬儀をお願いし、戒名をつけてもらうことになるとは思わなんだ。 ・墓地の管理事務所と墓石をお願いした石材店。没年と戒名を墓石に彫ってもらうことになるだろう。 ・奥さんが見つけてくれた葬祭業者の担当者と連絡先も記入する。ついでにお金もどのくらい用意しておけばいいのか、父母の葬儀の時の記録を引っ張り出して、経費を確認する。 ・とりあえず金額を合計してみたが、そこそこの金額は必要になるようだ。普通のケースではないので、お香典による収入はあてにできないだろうから、葬儀に関しては、どれだけ質素にしても持ち出しだろうな、と奥さんと話す。 ・これからどんどん悩みが増えてくるのだが、この件はそのスタートだった。

6日目の出来事ー2

・やることも連絡するところも無くなったとき、スマホに着信があった。 ・コロナ前には結構仕事を振ってくれた広告制作プロダクションの担当者からだった。 ・「〇〇日、取材行ける?」新型コロナの感染拡大とともに、まったく連絡もなくなって数カ月。そんなことは全く関係なく、昨日も連絡したけど、みたいな空気で話をしてくるのは相変わらずだ。 ・その後の予定が全く見えていなかったので、ちょっと返事を待ってもらいたい旨告げたら、「発注元にすぐ連絡しなくちゃならないんだけど」というので、妹の事情を説明した。 ・ちょっと間があって、「わかった、じゃあ…」というので、「明日には少し予定もはっきりすると思うので」ということで、明後日までには返事をすることで納得してもらった。 ・フリーランスになって7年目。昨年は新型コロナ禍で仕事が全くなくなり、えらい目にあった。今年になって、何とか仕事も戻ってきた。事情はあるが、せっかくやってきた仕事をみすみす逃すわけにはいかない。しかし、これまで通りのやり方では、少なくとも数カ月はやっていくのは難しいと思う。 ・仕事のやり方をどうすべきか。考えなければならないことが、一つ増えた。

6日目の出来事ー1

 ・妹の部屋を訪れることにした前日、ほかに何かできることはないか考えたが、特段思い浮かばない。 ・妹が住んでいた市の市役所に、どんな手続きが必要なのか聞いておこうと考えて電話をしてみた。事情を話すと、「死亡した日付はいつですか?」と尋ねられた。 ・その後、妹がもっていた銀行口座や加入していた生命保険、使っていたスマホのキャリアなど、かなりの数の窓口に今後の手続きについて問い合わせた。そのたびに帰ってきたのがこの「死亡した日付はいつですか?」という言葉だった。 ・「それが…」とそのたびに口ごもる。仕方なく、妹が亡くなった状況に加え、現在、DNA鑑定中で、家族としてもそのあたりを把握できていないことを説明する。それに対して返ってくるのは、「申し訳ありません。死亡届を出されたらまたご連絡ください」という言葉。 ・問い合わせをし始めたこの頃はまだ大丈夫だったが、その後幾度となく繰り返したこのやり取りにより、じわじわと精神的なダメージが蓄積されていった。

5日目の出来事ー2

 ・警察から確認OKをもらったものの、現場のアパートに入るにはどうすればいいのか。素人がいくら考えても解決策は出てこないので、プロに相談することにした。 ・葬儀をお願いすることにした葬祭業者の担当者と話をしていた時、事情を知ったその人が、「いろいろわからないことも出てくると思うので、そういう事に詳しい会社の人を知っているので相談したらいいですよ」といって、紹介してくれていたのだ。 ・電話して事情を説明すると、特殊清掃の会社の人を紹介してくれた。さっそく電話して相談。なかなか忙しいようで、限られたスケジュールの中で、いつ現場に行ってもらえるか交渉したところ、明後日の夕刻しかないことが判明。「とりあえず現場で物が探せるだけの掃除はしましょうか」ということになった。 ・特殊清掃の仕事が忙しいというのもご時世なのだろうか。この頃から、心の奥の隅の方に、少しづつ澱のようなものがたまり始めていたような気がする。

5日目の出来事ー1

 ・朝、アパートの管理会社から連絡。今月中に部屋を整理して原状回復、リフォームにかかりたいと家主の方から連絡があった旨、通知を受ける。解約の書類をどうするか、清掃(特殊清掃というジャンルの作業が必要になっていた)の段取りをどうするか、などの話をする。いくつかの点では進展があったが、懸案は残る。 ・一番の問題は、現状、妹の部屋に立ち入れないこと。事情を説明して警察に相談してみた。すると、部屋に立ち入ることについてはOKとの返事が。事件性はないと言われていたので、そのことが理由だったのかもしれんが、真相はよくわからない。 ・じゃあ、早いところ現場に行こうと思ったが、警察の担当者の話では室内はなかなか厳しい状況とのこと。我々のような素人が何の用意もせずに訪れて大丈夫なのだろうか。不安ばかりが膨らんでいく。 ・奥さんのママ友にご主人が警察官をしている方がいて、その手の現場捜査の経験が豊富とのことで、いろいろ情報を教えてもらう。このママ友は、当初から「早く安否確認をした方が」と言っていたと後になって奥さんから聞いた。ご主人のアドバイスかもしれんが、プロの嗅覚はさすがである。M警察の担当の方もそうだが。 ・様子を見に行くだけでも、最低限の掃除、消臭作業が必要になりそうな状況だ。さて、どうするか。

4日目の出来事ー3

 ・1か月遺体を安置ということになると、どれぐらい費用が掛かるんだろう。父親が亡くなったとき、火葬場の空き状況のせいで、数日、葬祭場に冷蔵での安置をお願いしたことがあり、このときにかかった料金のことが記憶があったからだ。 ・思わずM警察署の担当者に「その間の経費はどのくらい…」と聞いてしまった。経費は警察の負担、という答えを聞いて、かなりほっとした。 ・とりあえず状況を整理しよう、と奥さんと話す。遺体が戻らない以上、やれることと言ったら葬儀の準備ぐらいだよね、などとのんきなことを言っていた。 ・次の日から、やることが怒涛のように押し寄せてくるとは、まったく思わなかった。いや、少しは予感があったかな。

4日目の出来事ー2

 ・あちこち電話をしているところにM警察署から電話が入る。もうDNA鑑定が終わったかと思ったら、「鑑定が終わるまで1カ月ほどかかります」という連絡だった。 ・「一か月?なんで?」と奥さんが喚く。私も思わず大きな声で担当の警部補に問いただす。 ・「鑑定の案件が通常より多いらしく、我々も連絡を待つしかないんで…」という返答。鑑定が終わらないと死体検案書が作成できず、それが無いと死亡届も提出できず、葬儀もできない。 ・「葬儀は12月半ば過ぎか…」。しかしこればかりは我々が頑張ってもどうにもならない。あきらめて再度葬祭業者に連絡。お寺の住職にはどうしようかと思ったが、ことが事なので、実際にお目にかかって相談することにした。 ・死亡届が出せないということは、ほかの手続き関係に大きな影響をもたらすのだが、それが明らかになるのはもう少し後のことだった。

4日目の出来事ー1

 ・なかなか寝付けない、とか悪夢にうなされて目が覚める、というようなことは全くなく、気が付いたら朝だった。やはり、初体験のことがたくさんあり疲れたらしい。 ・私と奥さんはいろいろなことへの対応するため、やむなく仕事を休みにしたが、息子は学校があるので通常営業。6時過ぎには食事をするので起き上がり食卓に着く。食欲は今のところある。しかし、昨夜ベッドに横たわったときに覆いかぶさってきた何だか大きなものは、背中から肩の上に乗ったままだ。 ・息子を送り出し、奥さんと手分けをして関係者に連絡を取る。私はアパートの管理会社と部屋の後片付けについての打ち合わせ。奥さんは警察から遺体を搬送してもらうための葬祭業者探しと、すぐに火葬ができる火葬場の検討をつけておく作業に取り掛かる。 ・管理会社から、いくつかオーダーがあった。振り込まれていない分の家賃を払ってほしいこと、今月末で賃貸契約を解約したいこと、部屋の清掃、原状回復のために業者を含めて打ち合わせをしたいこと、だった。対応するため、何度も電話をしてスケジュールを調整する。 ・後でわかったのだが、部屋の残置物の処分などを私がやってしまうと、遺産を相続したとみなされ、相続放棄ができなくなる可能性があったらしい。しかし、その時点では賃貸契約の連帯保証人になっていたのでやらざるを得ないと単純に考えていた。 ・相続放棄ということも、この時点では頭になく、奥さんが見つけてくれた葬祭業者の担当の方がいろいろと教えてくれて、そういう可能性もあるかなと考え始めたのだった。 ・世の中、知らないことのなんと多いことか。そして、この後、知らなかったこと、わからなかったことに、いやというほど直面し、判断基準を持たないまま向き合わなかればならなくなっていくのである。

3日目の出来事ー6

 ・自宅最寄り駅に到着し、駅前のコンビニでビールと軽く食べるものを買う。奥さんにも聞いたが、「いらない」との返事。明日からやらねばならないことで頭の中はいっぱいなんだろうと思う。 ・とりあえず風呂に入ってビールを飲み、奥さんと明日からのことを決めておこうとしたが、なかなか話が進まない。とりあえず不動産屋に今後のことを相談すること。葬儀屋さんを探さなければならないことだけを決め、後は明日ということにした。 ・進行している仕事もあるし、親戚への連絡もある。どうすりゃいいのか。考えようとしても、何をどうすればいいのか、この日は全く考えが前に進まない。 ・何かを忘れているような気がしてちょっと考えてみたら気が付いた。私は身内を亡くしたんだ、という事実が、やることを考えているとちょいちょいどこかに行ってしまう。そのたびに「悲しい」とか「かわいそう」という感情を探したりしている。 ・悲しいのか大変なのかよくわからんが、大きなものがベッドに横になったとたんに覆いかぶさってきた。

3日目の出来事ー5

 ・もう一つ、何度も確認されたことがあった。司法解剖を行うかどうかだ。事件であれば有無を言わさず司法解剖されるのだろうが、妹の場合は遺族の希望も聞いて、ということになるようだ。捜査状況によっても変わるとのことだが、一応希望は聞かれた。死因など詳細が分かればと思い承諾したが、後日、警察から連絡があり、司法解剖はしないことになった。理由は確認できていない。 ・警察がアパートから回収してきたものの中に、見覚えのある、一冊の古びたノートがあった。鑑識の人が不思議そうに「なんだか通院記録のようなものが書かれているんだけど、日付がずいぶん古いんだよね」。 ・古いのは当然で、そのノートは、父が母の介護を始めたころの記録をつけていたノートだった。その旨を申し出ると、「なんだ…」と残念そうな返事が。捜査を攪乱して申し訳ない。 ・頬の内側からDNA鑑定用の検体をとって、この日の会談は終了。妹の遺体は鑑定が終わるまで警察署の管轄下に置かれることになった。「終わり次第引き取っていただけるよう、葬儀会社だけは決めておいてください」と言われ、警察を出る。 ・バスで駅まで戻り、電車で自宅に戻る。やることはたくさんあるのだろうが、何をすればいいのかは具体的によくわからない。そんな気持ちが頭の中をぐるぐる回ってどうにもならない。奥さんもこの時点ではそうだったらしく、二人ともほとんど口をきかず自宅についた。

3日目の出来事ー4

 ・奥さんと焦点の定まらない会話をすること約2時間。「そろそろ行こうか」とタクシー乗り場に。まだサラリーマンだったころ、12時回ってバスもなく、疲れて自宅まで歩くのが嫌になったときは、奥さんと待ち合わせてよくここからタクシーに乗ったことを思いだす。 ・時間通りにM警察署到着。担当のSさんを呼び出してもらう。ほどなくして現れたSさんに連れられ刑事課へ。「ではこちらでお待ちください」と指示されたのはまごう事なき取調室。机の上にはアクリルの衝立。奥さんと並んで座って待っていたら、Sさんが押収したらしきものを持って部屋に入ってきた。 ・絵柄としてはどう見たって取り調べ。あるいは拘置所の接見室だ。おどおどしている我々には一切構わず状況の説明が始まった。 ①状況からみて病死と思われること。 ②死後一カ月ほど経過していると思われるが、正確に知るには司法解剖が必要になること。 ③遺体の痛みが激しく、本人確認が難しいと思われるので、DNA鑑定を行いたい。 ④事件性はないと思われるが、本人確認が終わるまで、現場のアパートには立ち入れない。 ⑤病院の診察券などが見つからない。病歴について知っていたら教えてもらいたい。 ・事情が全く分からないので当惑することばかりだった。一番ひっかっかったのは③だった。一応写真は撮っているのだが、「お兄さん、確認しますか?」とSさんから聞かれた。どうしようかと思っていたら、Sさんは「私はお勧めしません。面影はあると思うんですが」というのにはびっくりした。 ・こういう現場には慣れているはずの警察官がそこまで言うのはどんな状況なのだろう。無理やり見せられると思っていたので意外だった。しばらく考えて、DNA鑑定でお願いすることにした。 ・後から聞いたら、歯型の採取も難しかったそうだ。あと④にも困った。早く後始末をしなければ、と考えていたからだ。

3日目の出来事ー3

 ・気を取り直して再び電車に乗り、妹のアパートの最寄り駅に向かう。しばらくして再びスマホに着信。先ほどの警察官(刑事課の警部補)からだった。次の停車駅で下車、折り返す。 ・「こちらに来ていただく時間なんですが、1600時過ぎにしていただきたいんですが」。別の事件の捜査が発生したらしい。警察も忙しそうだ。 ・1300時ごろには到着できそうな場所にいたのでちょっと困ったが、出直すわけにもいかないので了承。直後に奥さんから電話が入り、最寄り駅近くで落ち合って善後策を話し合おうということにして、電車に乗り込む。 ・最後に妹に会ったのはいつのことだったか。思い出そうとしても、頭がうまく働かない。特にこの数年、親族の葬儀や法事の連絡をしても参加することは少なく、最近では電話の返信もなかった。(理由は後になってわかる) ・最寄り駅に到着。今年の4月に今の家に引っ越すまでは、私もこの駅から電車に乗って都心に向かっていた。引っ越したのも留守電に入れたはずだが、妹に伝わっていたかどうか。 ・駅近くのカフェに入り、奥さんの到着を待つ。合流したら昼飯でも食おうかと思っていたが、二人ともそんな気分に離れなかった。警察との約束の時間まで、生産性のある話は何もできなかった。

3日目の出来事ー2

 ・不動産屋の担当からの電話の内容は、「警察の方に相談したら、今すぐ行った方が良いといわれたんですが」というものだった。 ・「わかりました。お願いします。私もすぐそちらに向かいます」。電話を切り、上長に報告しようと思ったら、「早く行って、早く!」と言われた。部屋にいたみんなに一礼してオフィスを出た。 ・JRでS駅へ。そこから私鉄で妹の自宅のある街へ向かう。現実感が、潮が一気に引くようになくなっていく。奥さんに電話で「11時から安否確認に入るって」と伝えようと思ったが、当然のように出ない。LINEでメッセージを送っておく。 ・11時過ぎ、ある急行停車駅までもう少し、というところでスマホに着信。また見慣れない番号だ。停車した電車から降り、着信履歴に折り返すと、警察官が出た。 ・「M警察署のSと言います。今大丈夫ですか?」「はい。電車内だったので電話出られずすみません」「本日不動産会社から相談を受けまして、一緒に安否確認に入りました」「お世話になります」「結論から申し上げます」「はい」「妹さんですが、部屋の中で病死した状態で発見されました」「わかりました。ありがとうございます」 ・状況を説明したいので、後でM警察署まで来てほしいとのことだったので、「では後程」と言って電話を切る。 ・何があったのか、どうしたんだ、という思いよりも、やらねばならないことが山のように発生することが予想された。しかも、今までやったことのないことが多くなるだろうなと思った。 ・やれやれ。しかし、私と奥さんとで片付けていかなければならないんだろうな、こればかりは。

3日目の出来事ー1

 ・11月10日の夜、電話できなかった不動産会社の営業開始を待って電話。妹からの連絡はまだ無いようだった。「1年前の更新時にお聞きしていた勤務先にもあたってみたんですが、退職されているようですね」。 ・勤務先を知らなかったので教えてもらった。情けない限りである。ついでに気になることがあり聞いてみた。私が保証人になっているということだ。 ・「更新時に印鑑もいただいていますよ」。何だと?そんな覚えはなかった。不信感と不安が一気に高まる。何をしていたんだ、妹は。 ・仕事の予定があり、今日は現場に行けない。アパートの様子を見に行ってもらえないか不動産屋の担当者にお願いした。 ・「いつなら行けます?」「明日なら…」「一応警察にも相談しておきますね」。慣れた様子の返事が返ってきた。 ・段取りをお願いして、一度オフィスに向かう。一応、状況を報告して、今後の対応を話しておこうと考えていた。オフィスにつき、上長に報告。「すぐに行った方が良いんじゃない。すぐ行ってよ」と言われているとき、不動産屋の担当から電話が入った。 ・状況としては、上長の言うとおりだった。

2日目の出来事

・妹に久しぶりに連絡を入れたが、翌日11月10日になっても返信はなかった。 ・電話はつながらないが、「留守番電話サービスにおつなぎします」とアナウンスされるので、回線契約そのものは生きていると思うのだが、LINEはいつまでたっても既読にはならなかった。 ・念のため、奥さんの方に連絡がいっていないか確認してみた(数年前に契約の関係でお互いのスマホを交換していた)が、連絡はないようだった。 ・ちょっと嫌な感じがしはじめたが、昨日アポが取れたある作家の方との打ち合わせを済ませ、オフィスには立ち寄らず自宅に戻ることにした。 ・夕刻になっても妹からの反応はなかった。帰宅した奥さんも心配し始めた。 ・25年ほど前、母が脳梗塞で倒れたとき、まだ父母と同居していた妹は行き先も告げず旅行に出かけていて行方不明。携帯電話もなかったので3日ほど連絡がつかなくて慌てたことがある。 ・またかと思ったが、携帯が通じている以上そんなことはあるまい。不動産会社に電話をしたがすでに営業は終了。明日朝一番で電話をすることにした。

2日目の出来事

 ・11月9日(火)、翌日の打ち合わせアポイントが取れ、業務委託契約で仕事をしている会社に出勤しようとしていた時、スマホに着信があった。画面表示には見慣れない会社名。建設会社のようだった。 ・建設会社が何の用だ、と思いつつ出てみると、「〇〇様のお兄様ですか?私、○○様のアパートの管理をしている不動産会社のものです」。妹の件だった。 ・家賃がいつもの時期に振り込まれず、電話にも出ないということで、これまでなかったことなので、保証人の私に電話をした。妹に連絡をしてほしいという。 ・「今までこういうことはありましたか?」と尋ねると、「私が知る限りありません」と。了解して、携帯に電話をして、LINEでもメッセージを送った。 ・このところまともに会話をしていなかったので事情が分からなかったのが少し心配だったが、連絡ぐらいつくだろう。このときはそう思っていた。

1日目の出来事

・2021年11月11日から、あまりにもたくさんのことが、怒涛のように身に降りかかってきた。もちろん今までにまったく経験しなかったことばかり。 ・気が付けば時間だけがとんでもないスピードで過ぎ去っていく。同じような感覚は母が脳梗塞で倒れたとき、父が入院して一週間もたたないうちに亡くなったとき、そして家内が出産後に病を得たときにも経験した。 ・あまりにもたくさんのことが通り過ぎていくので、どうしてもぼーっとしてしまうが、ぼーっとしていると、いくら大変なことを経験しても、どんどん忘れて行ってしまうので、ブログに残しておくことにした。 ・いや、どんどん忘れるために書いておこうと思う。そうしないと、どうにもやりきれないのだ。