投稿

1月, 2022の投稿を表示しています

13日目の出来事ー2

 ・市役所のそばで見つけた司法書士、行政書士事務所で妹の事あれこれを説明しつつ相談。いきなり入ってきていきなりこんな話をされるほうも大変だったろうが、事態を共有してくれる人がいてくれるだけでなんとなく安心感を感じる。 ・昨日相談に行ったお寺の住職さんにも同じことを感じた。新型コロナ禍で父や母の年忌法要などを全くできていないことや、引っ越しに際し、何の儀式もなく仏壇や位牌を移動したことなど、心の奥に引っかかっていた。奥さんは、実家が本家でそのあたりのことを本当にきっちり熱心にやる環境で育っていたので、私より深く負い目を感じ、負担になっていたようだ。 ・住職は、「ちゃんと話しかけて、報告すればご両親に伝わるし、心配することはないですよ。気持ちを伝えるようにすれば大丈夫」と言ってくれて、それを聞いた家内の表情はとても安心したものになっていた。 ・司法書士、行政書士事務所の担当者も、いろいろ親身に聞いてくれて、知らなかったことを教えてくれた。やはり本人死亡の場合、その後の処理は大変なようだ。口座の取引内容が分からなかったので「負債が大きいかもしれない」「そうなったら相続放棄という選択肢も」と考えていたのだが、相続放棄を行うにも弁護士に依頼する必要があり、それなりの費用が発生することが分かり、そのためには資産状況を正確に把握する必要がある。それを知るための手続きをプロに任そうという相談をしにここにきているわけだが、一体どうすればいいのか、堂々巡りみたいな話になってしまった。 ・いずれにしろ妹の死亡が確定しないとできることが少ない、という結論となり、そうなった場合にできることをまずは教えてもらったというのがこの日の収穫だった。

13日目のできごとー1

 ・妹の部屋から回収してきたものを整理した結果、やらなければならないこと ①携帯電話(スマホ)の解約 未払いの使用料金と機器代金をどうするか。キャリアのショップに問い合わせたところ、死亡届が必要とのことで、現時点では手続きができない。このままでは滞納料金が嵩む一方だがどうしたものか。手続きができてもうかつに払ってしまうと、遺産を相続したとみなされて、その後の放棄ができないという情報もあり、悩ましい。ご時世か、電気料金を電話料金とまとめて支払う形にしているので、さらにややこしさを増している。 ②取引銀行 二つの銀行の口座がありそうなことが分かった。とりあえず状況を連絡し、引き落としなどできないような扱いを頼む。どちらの銀行も事情を話すと一定の理解はしてくれたが、どちらも解約には名義人の死亡が確認できる書類が当然だが必要になる。通帳も古いものばかりで、本当にこれだけかどうかわからない。しかも、一つの銀行の方では、すでに亡くなっている父親名義の通帳が出てきた。 ③社会保険関係 妹が居住していた市の役所に問い合わせ。手続きすべき内容はわかったが、やはり死亡届の提出後となる。 ・やるべきことはたくさんあるのはわかったが、実際に何もすることができない。この状態がしばらく続くわけだが、いつ終わるのかがわからない。これがかなりの精神的な負担になるということが、じわじわとわかってくる。 ・各種の手続きに印鑑証明が必要になりそうなのだが、転居後、印鑑登録をしていなかったのを思い出して、市役所に行くことにした。手続きを終わったら奥さんが窓口近くにある大型のディスプレイに食いついている。地域の会社が広告を流しているデジタルサイネージだった。見入っていたのは、ある司法行政書士事務所の広告だった。 ・どちらからともなく「相談してみようか?」という言葉が出た。私も奥さんも、妹の部屋から持ってきた資料の訳の分からなさに心が折れかけていたらしい。最初は、「早く口座を何とかしなきゃ」と息巻いていたのだが…。サイネージの広告を見るとその事務所は市役所のすぐ前にあった。さっそく訪ねてみた。

12日目の出来事ー2

 ・お寺に向かう途中、昼食時なので何か食べようかという事になり、街道沿いにファミレスがあったので駐車場の印を目掛て左折したが入り口がよくわからず、気が付いたら誘導員の指図でスーパーの駐車場に入っていた。まあいいか、後で買い物すりゃと言いつつスーパーを出て目をつけたファミレスに。 ・父母が亡くなったときも後始末に駆けずり回ったが、やたら腹が減ったことを思い出す。父の時は、妹を車に乗せて父が住んでいたT県のS市に向かい、手続きと遺品整理を手分けして行った。昼飯や、たまに夕飯を一緒に食った。 ・今回は、そんなに腹は減らない。事情が事情だからか、年齢的なものかよくわからんが、何となく食べても味がよくわからんというか、食べ応えがないのだ。 ・ぼそぼそと今後のことなどを奥さんと話しながら食事を済ます。コロナの新規感染者も減り続けているので、店内の活気も戻ってきているようである。 ・お寺に着き、御挨拶の後事情説明。「で、亡くなったのはいつ?戒名つけるのに必要だから」と言われて当惑。それを調べておりますので…と説明する。このやり取りがこの後、あちこちでくりかえされるのである。 ・戒名をお願いし、仮の葬儀日程を決め、お布施の金額について切り出そうとしたら、「お父さんの時はいくらでしたっけ?」と予想だにしない質問が。かくかくしかじかで、と過去の記録を見ながら答えると、「その金額じゃあ、この戒名はできないなあ」と、これまた返答に窮するお答えが。 ・そう言われても、今回は事情が事情なので予算にも限りが、と実情を説明したら、「わかりました。その金額でやりましょう。何にしろ早く成仏いただいた方が良いので、遺体が戻り次第やりましょう。我々の予定が空いていたらすぐやりましょう」と言ってくれた。 ・ありがたい。でもそれから2カ月以上もお待たせすることになるとは、このときは全く想像していなかったのだ。

12日目の出来事ー1

 ・妹の部屋から回収してきた諸々のものを確認、整理を進める。やはり最近の生活状況がわかるようなものはない。警察から返却されたスマホの中身を確認するため充電する。アダプタとコードも一緒にあったのでコンセントにつなぐ。例の臭いが漂うのでベランダに置きたかったが残念ながらコンセントがない。ジップロックに入れてビニール袋の中に入れて対策をして、ジッパーの隙間からコードを引っ張り出して充電する。 ・持ってきた物品の中に何台かのガラケーとスマホがあった。よく探したらAndroidのタブレットもありSIMも入っていた。料金の請求書を確認したら3回線契約していることがわかった。私が聞いていた電話番号はその中の一つで、メインのスマホのものではなかったようだ。電話に出ない出ないと思っていたらそういうことであったか。1年ぐらい前から電話しても留守電になるばかり。返ってくるのは固定電話からばかりだったような気がする。 ・ともあれ、早いところ回線契約を解除したいが、どうしても契約者の死亡が確認できる書類が必要だという。死亡届を出せたらすぐにも手続きを進めようと思うが、死亡後の請求に関してはどこかに相談しなけらばならないと思う。 ・そろそろお寺との約束の時間なので奥さんと出かける。昼飯は途中どこかで食べよう。

11日目の出来事ー3

 ・この日にやったことがもう一つあったのを思い出した。 ・父母の葬儀の時にお世話になったお寺の住職への連絡だ。母が亡くなった後、お墓をどうするかという問題が起きた。我が家の代々のお墓はG県の山間部にあり、今住んでいるところから行こうとするとどう頑張っても3時間はかかる。我々も高齢化していくので、住まいの近くにお墓を設けようということになり、当時存命だった父とも相談し、ある大型の墓苑にお墓を立てた。 ・菩提寺はG県の山の中なので、墓苑に相談したところお寺を紹介してくれた。ご住職には母の戒名をいただき、納骨の際は副住職にお経をあげてもらった。その後父が亡くなったときも戒名をいただき、ご住職に引導の儀を執り行ってもらった。 ・電話をし、妹の件を報告したところ、「そういうことなら、遺体が戻り次第早く葬儀を行いましょう」と言ってもらった。翌日、時間をもらえたので、お寺に伺い、ご挨拶と改めてお願いをすることにした。 ・ありがとうございます。よろしくお願いします。この日の夜は、少し良く寝られたように思う。

11日目の出来事ー2

 ・警察署を出て不動産屋に向かう。店舗に入ると担当者が「いかがですか…」と心配してくれる。ビジネスということもあろうが、やはり事が事だけにこちらのことを心配してくれているのが伝わってくる。ありがたいありがたい、と思いながら保険のお話。 ・入居時に今回のようなケースの損害を補償する保険を契約していたので、特殊清掃や残置物の撤去、その後のリフォームまで賄える金額が通常保証されるようだ。しかし、今回のケースが通常の範囲に収まるのか全く分からない。 ・見積もり用として頼まれて撮影し写真を送っているのだが、清掃の見積もりは出たのか聞いてみた。「業者の方から現場を見てみないと状態がわからないと言われてまして…」。頑張って撮影したヨモツ画像データは役に立たなかったらしい。 ・部屋の回復への状況は確認できたが、その結果どのような処理が必要で経済的負担はどうなるのかはわからないまま、借りていたカギを返却して店を出る。妹が持っていた鍵を我々がもっていることは伝えた。必要があれば開けて入ってもらってもよい、ということは言われた気がする。 ・途中で給油して帰ろうと思ったら不動産屋から着信。書類を渡し忘れたとのこと。アパートの契約を解除するための承諾書だという。なんせ保証人欄に名前があったから仕方がない。自宅に郵送することをお願いして帰宅。 ・何をする気力もなく、食事、入浴後、気を失うように寝た。この頃からこんなことが増えていった。

11日目の出来事ー1

 ・朝、前日に連絡をもらった件でM警察署を訪れる。窓口で待たされていたら、続々と署員が署内に入ってくる。「よ」「お疲れ」などと言いながら、かなりの人数が集まり、しばらくしたら装備を整え車両置き場のある裏の方に出ていった。 ・勇ましいが、何か大きな捕り物でもあるのだろうか。警察官が忙しいのは良いことか悪いことか。 ・担当の警部補がブツをもって降りてきた。待合スペースのソファで奥さんとを受け取る。スマホ、父が記していたノート、財布、部屋の鍵、以上。スマホの中を確認したらしいので、どうやってロックを解除したのか聞いてみたら、画面ロックがかかっていなかったそうだ。いまさら言っても仕方がないが、不用心である。 ・部屋を探したとき、他人名義のタスポを見つけたので、一応届けた。無くしても紛失届を出す人もいないので、持ち主はわからんでしょう、と警部補は言う。マイナンバーカードの将来を見るような思いだった。拾得物を届けたということで書類を書かされる。 ・いつの間にか妹は煙草を吸うようになっていた。部屋には灰皿があり、吸い殻が放置されていた。本当に不用心である。これが原因で火事にならなかったのは心底良かったと思う。次は不動産屋に向かう、清掃、リフォームにかかる費用を賄う保険の手続きのお話である。

10日目の出来事

 ・前日に回収してきた様々なものを分類、整理して妹の生活を少しでも解明しなければならない。放置されている契約や支払いなどがあれば解約したり、支払いを処理しなければならないと、このころまでは考えていたからだ。 ・とはいえモノがモノだけに、なかなか手を付ける気にならない。不動産屋に頼まれて前日に室内で少し撮った写真(見積作成用)を送信して、その旨電話したら、「鍵は早めに返してくださいね」と言われた。マスターキーだったようだ。 ・そうこうしていたら、M警察署の担当から連絡があり、当初妹の部屋に入ったときに押収(事件でもないが)してものを返却できると告げられる。スマホ、財布、両親に記録が残ったノート、部屋の鍵などだ。明日の朝、受け取りに行くことにする。 ・不動産屋から鍵の返却を求められたとき、「これから妹の部屋に探し物に行く時にいちいち鍵を借りるのは面倒だな」と思ったが、妹の鍵があれば便利だと思った。良いことなのか悪いことなのかわからんが。しかし実際、これがその後役に立つ時が来るのだ。 ・生命保険の担当者に、打ち合わせの日程を決めようと連絡したが電話がつながらない。物事が進んでいるのか進んでいないのかわからない日々が続く。

9日目の出来事-10

 ・前回の捜索時のように車の中でごそごそと着替え、それまで着ていたものをビニール袋に詰めて自宅へ向かう。証拠品として持ち帰ることになったビニール袋は7つぐらいあったろうか。 ・塗装の仕事をする人向けの性能が良いマスクを持って行って使ったが、期待したほどの効果はなかったように思う。あの臭いはマスクの隙間からか繊維の間をすり抜けてか、鼻腔の中へと入りこみ、奥の方に残ってしまうのか、いつまでたってもあの臭いが漂っている気がする。 ・メガネの上からかけられるゴーグルも用意していったが、私はメガネをかけているので、それほど必要ではなかったか。メガネに臭いが付くのを防ぐという効果はあると思うが。 ・自宅に到着し、まず入浴。その後、収穫物の整理をしようと思ったが、気力が続かず大まかに分けてビニール袋に分けてしっかりと密封。室内に置くのはどうしても抵抗があったので、ベランダの隅に置いた。 ・奥さんも私も夕食を作る気力は全くなく、時節柄どうかと思ったがこの日は外食にすることにした。自宅近くの、以前から行ってみたいと思っていたもつ鍋屋に行こうと思ったが、予約なしでは入れなかったので、隣の居酒屋に入ったらこれが大当たり。枯渇しかけていたエネルギーが少し復元したように思う。また行こうと思いつつ帰宅、すぐに寝た。

9日目の出来事ー9

 ・何とか最近の暮らしぶりがわかる手がかりはないかと、あちこちひっくり返す。押入れの天袋の中を探したら、デスクトップパソコンが箱に入ったまま置かれていた。Wi-Fiのルーターもあった。明らかに今は使っていない様子だ。 ・奥さんが、衣類の収まっていた家具のあたりからだと思うが、ジュエリー類が入った袋物を探し出した。居間(のようなところ)の床に置いてあった箱の中に、腕時計がたくさん入っていた。ネズミーランドで買ったであろうキャラ付きの腕時計は化粧ケースに入ったままだった。そのほかに、メンズサイズの、国産ではあるが結構高価な機械式時計がいくつかあった。 ・妹は以前、ショッピングモールの時計売り場で長く働いていた。社販で買ったものだろうか。私もソーラー電波腕時計を何かの折にもらって、今も使っている。しかしなぜメンズ。レディースも何本かあったが。ジュエリー類と一緒にビニール袋に入れる。 ・目につく引き出しや段ボールなどはすべて開けた。押入れの奥や家具を移動しなければならない場所にあるものは、仕方ないがあきらめた。 ・一緒に作業をしていた清掃会社の方に、スマホ、タブレット、鍵や財布類がもしあったら、保管しておいてもらえないか頼んでみた。「いいですよ。もしあったら袋に入れて、玄関あたりに置いておきます。不動産屋にも言っておくので、後日取りに来てください」。あっさりOKしてくれた。 ・ありがとうございます。挨拶をして、先に引き上げることを伝える。さて、本当の捜索はこれからだ。 ・

9日目の出来事ー8

 ・トラベルバッグも古びていたが、中から見つかった通帳もなかなかのもの。中身をちょっと見たら、20世紀の日付の印字があった。最近、口座を作っても通帳無しのことが多い。「紙の通帳をご希望の方は別途手数料を…」ということも多いので、もともと通帳は無いのかもしれない。 ・通帳を見つけたかったのは、どこから入金されたのか確認することで仕事先が把握できたり、支払先や引き落とし先を確認することで負債や未払いがないかどうか確認できると思ったからだ。ガス・水道・電気・電話などの契約・支払い状況なども知りたかった。 ・そのあたりがわかるような最近記帳された通帳は無さそうだったが、詳しいことは自宅に帰って調べることにしてトラベルバッグの中身も全部ビニール袋に入れた。 ・部屋の隅に積まれていた書類の中に、年金手帳や以前勤めていたらしい会社の年金記録があった。なぜこんなところに積まれているのか。 ・使っていないらしいスマホやタブレットがいくつか見つかった。キャリアにはこの事態が発覚してすぐ解約してほしい旨連絡したが、本人の死亡が確認できる書類がないとできないと言われモヤモヤしていた。その時に回線が3つあると言われ、どういうことかと思っていたが、こういうことか。 ・しかし、なぜ使っていない回線を契約したままにしているのか。またわからないことが増えた。

9日目の出来事ー7

 ・妹の財布は警察が初期の捜査で回収しているのはわかっていた。いつ返却されるのかはわからないが、クレジットカードやキャッシュカードはそちらにあるだろうと予想していた。銀行との取引がわかる通帳をまず探すことにした。 ・全く生活状況がわからないので、どこに何をしまっているのか皆目見当がつかない。日常的に使っている鞄のようなものがないか探したが、なかなか見つからない。夢のネズミの国で撮影した写真が山のように出てきたと思ったら、その山の中から年間パスポートが見つかった。 ・ネズミの本国の本家にも行っていたらしく、写真と、現地通貨が出てきた。お隣の国に旅行した記録やホテルの領収書も出てくる。最近のものも多い。何だか楽しく暮らしていたようだ。 ・しかし、最近の銀行取引記録や通帳が見つからない。警察が「ない」と言っていた診察券なども見当たらない。 ・押し入れから使われていないガスコンロが出てきたりして驚いた。ここまでカオスとは。生活の中心と思しき場所には、マッサージチェアともベッドともつかないものが横たえられていた。ローンの支払い予定表があってわかったのだが、結構な値段のマッサージ機能付きベッドだった。しかも残債がたっぷりあった。 ・居室の奥にはもう一部屋あって、衣類が収納に入っていたり、ハンガーラックにかかっていたり。驚いたことに照明器具がない。部屋の奥には窓があるのだが、締め切りだったようだ。 ・窓の前をふさいでいた家具を無理やり動かし、窓を開け、外側の雨戸をあけたら、とても明るかった。気が付くと窓のわきに設置してあるエアコンと換気扇が動いている。部屋の温度が低いと感じたのはこのせいだったのか。亡くなった日からつけっぱなしだったのか。気になって、次の日警察に言ったので担当者に聞いたら、「あっ」。何かと思ったら「先日捜索中に作動させて切るのを忘れてました」。リモコンあったのか。このときは見つからずブレーカー落として帰ってきたのだ。 ・探していた通帳関係が見つかったのは、古ぼけたキャスター付きのトラベルバッグの中だった。 ・

9日目の出来事ー6

 ・保険会社とのやり取りを終え、いよいよ妹の部屋の再捜索に向かう。奥さんと用意してきた防護グッズをアパートの前に降ろし、先日停めたパーキングに入れ、歩いて現場に向かう。気分はどうしても黄泉平坂を下っていくイザナギだ。 ・この日に捜索を決めたのは、不動産屋さんが依頼した特殊清掃の会社が残置物の整理に入る予定があったからだ。できれば、「必要になりそうな書類があったら保管しておいてください」とお願いしたかったが、そういうサービスはやっていないらしい。部屋に残っているものは一切合切処分されてしまうとのことなので、参加することにした。 ・すでに大物の撤去作業は始まっていて、二人の作業員の方が運び出せるものを運び出していた。書類などがありそうな部分は作業せずに残してくれていた。 ・室内に入る。異臭は先日と大差ないが、室内の温度が低いように感じた。原因はいずれ分かるのだが、かまわず捜索を始める。先日は手に取れる状態のものだけを集めた形だったが、今回は引き出しや様々な収納の中を探さなければならない。 ・まず、床の上やテーブルの上に積み重なっている紙類から見ていく。その場で一つずつ確認していたら時間がかかって仕方がない。とにかく短時間で済ませたいので、少しでも関係がありそうなものはどんどんビニール袋に詰めていく。見る間に持ち帰るビニール袋が増えていった。

9日目の出来事ー5

 ・実際の生活でいろいろと動きがあって、書き込みができなかった。少し状況が進んだ。 ・妹の担当だった生命保険会社の外交(とは言わないか、最近は)から連絡があり、説明のため来訪するのを少し先に延ばしたいという。同行予定の上席者の予定と、死亡届が出せていない状況では、あまり有効な説明ができないと思う、というのが理由だった。 ・亡くなってから改めて、という事なのは生命保険だから当たり前だな。しかし、生命保険がどれぐらいなのかは把握しておきたい。もし保険金で賄えないような負債が残されていたら、相続放棄を検討せざるを得ないからだ。試しに聞いてみた。 ・どんなやり取りがあったか記憶が定かではないが、確か同行する予定であった上席者の方から連絡があって、教えてもらったように思う。びっくりするような金額ではないが、ある程度まとまった金額はあるようだ。これ以降、この金額を軸に相続するか、放棄するかを考えていくことになった。 ・とはいえ、先日かき集めてきた書類だけでは、やはり負債の金額はわからない。翌日にもう一度妹の部屋の捜索に行こうと考えていたが、どんな類のものを見つけなければならないか、奥さんと打ち合わせた。 ・連絡を取っていた両親の墓がある墓苑から、葬儀や納骨の儀を行うときのための申し込み用紙が届いた。これを書いて申し込めるのはいつのことになるだろうか。

9日目の出来事ー4

 ・少し話が前後してしまったが、再度妹の部屋に行って、本格的に遺留物の捜索をしなければならないと、覚悟を決めていた。なので、一度目に妹の部屋を訪れた次の日、家の近くのホームセンターに行って、いろんな装備を用意した。 ・コロナ病棟の看護師の皆さんが身につけているようなビニールの防護服(上下セットだと思って買ったら上衣だけだった)、少し厚手のビニールの手袋、塗装工の方が使うような、臭いをシャットアウトしてくれそうな高機能のマスク、メガネの上から装着できるゴーグル、ビニールのオーバーシューズ、防臭効果があるというビニール袋、回収したものを収めるための大きめのジップロック的な袋多数、消臭スプレーやアルコール除菌スプレー、消臭ビーズなどである。 ・とにかく耐え難いのが現場の臭いだった。古事記に、イザナギが、亡くなった妻であるイザナミが忘れられず、黄泉平坂を通って黄泉の国に行く件がある。変わり果てたイザナミの姿を見てしまい、「よくも私に恥をかかせましたね」と、追ってくるイザナミから逃げてこの世に戻るという話だ。変わり果てた姿を見たわけではないのだが、イザナミに追われたイザナギの気持ちは、少しわかる気がする。 ・契約関係で気になっていたのは、スマホである。早く解約しないと請求金額が増える一方だ。機器そのものは警察が回収しているはずなので、明日にでも連絡してみようと思う。 ・イザナミは、イザナギはなかなか迎えに来ないので黄泉の国の食べ物を食べてしまった(ヨモツヘグイ)ので、もうこの世には戻れないという。亡くなった部屋に残されたスマホを回収したらどんなことが待っているのか。ヨモツデバイスを何とかしないと、請求金額が増えることだけは確実なのだが。

9日目の出来事ー3

 ・派遣会社はそれなりに大きいところで、私でも名前を知っている会社だった。仕事の内容は記すわけにはいかないが、私が知っている限り、これまで妹が携わってきた類の仕事ではないように思う。 ・何時間かして、妹を担当していた男性と話をすることができた。事情を話すと、「あ、そうだったんですか… ご愁傷様です」との言葉が返ってきた。契約期間を見てみると、発見された日より一カ月ほど前に終了となっている短期契約だった。 ・いつまで出勤していたのか、記録があるのか聞いてみた。 ・「〇月〇日に出勤されなかったので、どうしたのかなって思って」。一度電話はしてくれたようだ。でも、それだけだったみたいだ。「こちらとしては契約解除とさせていただきました」。最終出勤日と、派遣会社は自宅まで行って確認してみる、というようなことはしないということが分かった。 ・後になって、M警察の担当の警部補にこの件話したが、つかんではいなかった。同じころにスマホの通話の記録があったということを聞いたが、この時の通話だったのかもしれない。 ・突然仕事を休み、電話にも出なかった。失踪するならともかく、突然の病死だったんだろうな、と思ったが、もちろん本当のところはまだわからない。

9日目の出来事ー2

 ・もう一つ、妹の暮らしを知るためにつながりそうな手掛かりは、派遣会社との派遣労働契約書だった。これは郵便物ではなく、部屋のどこかに放置されていた封筒に入っていたものだと思う。 ・妹に連絡がつかなくなったときに、不動産屋の方が契約書に書かれていた勤務先に連絡したところ、すでに退職していると告げられたことは以前に書いた。 ・その後、仕事はどうしていたのか。その手掛かりがその書類にあった。規約書に書かれた日付は、不動産屋の方が退職を告げられた日の後、連絡がつかなくなる数カ月前のものだった。無職ではなく、派遣契約で仕事をしていたことが分かった。 ・妹は、デパートや専門店での販売職を長年経験していた。私の知っている限りでは、だが。不動産屋の方が連絡した勤務先も、その種の仕事を思わせるお店だった。しかし、派遣契約書記載された仕事は、それとは異なる内容のものだった。 ・妹の様子が少しでもわかれば、と思い、契約書の電話番号に電話をかけた。オペレーターに事情を話したところ、担当者から折り返し連絡をもらえることになった。

9日目の出来事ー1

 ・昨日連絡が取れた生命保険会社の担当の女性から連絡があり、説明を聞く日程を決めた。妹のアパートのある街の支店に在籍とのことだったので、こちらから出かけようと思っていたのだが、私の自宅まで来てくれるという。ありがたく承諾した。 ・上席の社員の人と車で来るとのことで、日程は若干先になった。そりゃそうだ、新人にはちょっとややこしい話だもんなあ。申し訳ない。 ・電話では保険契約の内容までは説明できないとのこと。これもそりゃそうだ、と思う。いくら電話で「兄です」と名乗ったって、本物かどうかわかりゃしない。父親が亡くなったときも、生命保険の保険金を受け取るのに私が何者かを証明するために膨大な量の書類を集める必要はあったもんなあ。打ち合わせまでに何か用意する書類などあるか、確認しようと担当者に電話したがなかなかつながらない。 ・これから、妹の件でも同じような作業が発生するのかあ… いかん、また悲しみや口惜しさがどこかに行ってしまった。 ・母が亡くなったときに建てたお墓のある墓地に妹の件を連絡したら、封書が届いた。納骨の儀の案内と、墓石に戒名を刻んでもらうための手続きについてのお知らせだった。そうそう、こういう仕事もあったっけ。

8日目の出来事

 ・仕事場を抜け出して現場に駆けつけてから1週間。そろそろ携わっていた案件の確認の連絡がいくつか入ってくる。先が見えないこの状況で、今後も通常通り仕事を続けていけるのか。どこかで結論を出さないければならないが、先が見えないので今のところどうすればいいのかわからない。こういう状況で毎日が過ぎていくのはつらい。体の奥の方がじわじわと蝕まれていく感じがする。 ・その点、目の前にあることを手を動かして処理していくのはある意味気が楽だ。なんてことを考えながら、昨日妹の部屋から回収してきた書類(大半が封書やDMである)の整理をする。 ・室内に長いこと放置されていたためか、あの臭いがほとんどの書類に染み込んでいる。ビニール袋の中に消臭スプレーを振り撒いて一晩おいておいたがほとんど効果はない。ベランダで少しづつ取り出し、アルコールをスプレーしながら確認を進める。 ・ほとんどがそれだけでは知りたいこと(持っていた口座やスマホの契約について)の確認にはつながらないものばかりだったが、手掛かりにつながるものがいくつかあった。 ・一つが生命保険会社から毎年来る「最近お元気ですか?」という手紙。契約していた保険会社と担当者の名前が明記されていたので、さっそく電話をしてみる。 ・担当者から折り返し電話が来たので事情を説明する。一瞬息をのむ様子が伝わってきたあと、「そうでしたか。お悔やみ申し上げます」と。今年になって妹の担当になり、本人には未だ会っていなかったそうだ。一件契約があることが確認できたので、翌日以降に時間をとってもらい内容を説明してもらうことにした。

7日目の出来事ー8

 ・ベッドに横になったものの、なかなか眠れない。ふとした瞬間に妹の部屋の臭いが漂う気がする。持って行ったバッグが気になるが、顔を近づけて嗅いでも特に臭いはない。 ・気が進まなかったが、デジカメで撮影した妹の部屋の写真をPCに取り込み、不動産屋さんに送る準備した。ちゃんとデータがコピーできたか確かめたとき、画像を見てしまう。撮っているときは何とも嫌な感じだったが、画像になると思ったほどではない。 ・現場ではものすごく散乱していると感じたが、データで見るとそれほどではない。まあ、昔実家で同居していた頃の妹の部屋の様子を知っているからかもしれないが、とんでもなく乱れたとか、困窮して悲惨極まりない、という生活をしていたという印象はない。 ・しかしあくまで印象である。ここ数年、コミュニケーションは電話ばかり。いったいどんな暮らしをしていたのか全くイメージできない。奥さんと話をしていて分かったのだが、顔を合わせて話したのは、父親の三回忌の時らしい。1年前ぐらいに会った気がしていたが、4年前じゃないか。 ・仕事も何をしていたのか。一年前には働いていたスーパーを退職していたことも、不動産屋さんから教えられる始末だ。 ・無職なのか?わからないことがどんどん増えていく。

7日目の出来事ー7

 ・ぐったりして自宅に戻る。あまりのことに夕食をどうしたか全く記憶がない。息子は冷蔵庫にあった冷凍食品を一人で食べて、スマホで友達と話をしていた。 ・妹の部屋から回収してきたものを分別整理する元気はなかった。とりあえずビニール袋をもう1枚重ね、どこに置いておこうか一瞬考えたが、やはり臭いが気になりベランダにした。 ・アパートの片づけをどうするか。銀行口座や生命保険の状況をどのように調べるのか、スマホは解約できるのか。考えなければならないことは山のようにあったが、具体的にできることはあまりない。何より、体の芯の方がぐったりしてしまったので、この日は寝ることにした。 ・風呂は入ったが、ベッドに横たわると、あの臭いを感じる。奥さんのママ友の言った通り、鼻の奥に臭いが残っているのだろうか。精神的なものだろうか。どちらにしろ、確実にダメージは積み重なっていった。

7日目の出来事ー6

 ・かき集めた郵便物などを持参したビニール袋に詰める。付着した臭いが漏れ出さないように、もちろん二重する。私が先にコインパーキングに戻り、車を現場に持ってきて荷物と奥さんを回収することにした。 ・捨てるつもりで着ていたウィンドブレーカーは車の中で脱ぎ、持参の服と着替える。真っ暗なパーキングに地元ナンバーでもない車が停まっていて、車の中でごそごそ着替えている奴がいる。しかも車内にはビニール袋やら手袋が積んである。怪しいことこの上ない。パトロール中の警察官がいたら職質は必至だろう。 ・妹の部屋の臭いはウィンドブレーカー以外にも、体、頭、していたマスクにも付着していたようだ。ウィンドブレーカーもビニール袋に密封。とはいえ、車内で着替えていたので、臭いは漂う。 ・現場で待っていた奥さんを車に乗せる。奥さんも捨ててもいいような服を着てきていたので、車内でごそごそ着替える。「旦那が警察官のママ友から聞いたんだけど、あの臭いは何度経験しても慣れないって。現場から戻ると二度お風呂に入るらしいんだけど、鼻の奥に残っちゃうんだって」という言葉に無言で頷く。 ・車用の消臭剤を買わなければならんな、と思いながらハンドルを握り、自宅へ向かう。息子が腹を空かせて待っているはずだ。

7日目の出来事ー5

 ・玄関を入って左側に下駄箱があった。腰より少し上ぐらいの高さで、上に物を置けるようになっているのだが、その上におびただしい量の郵便物が残されていた。持参したビニール袋にとりあえず入れていく。臭いがどんどん耐え難くなってきて、とにかくその場を早く立ち去りたかったので、いちいち分別することは考えなかった。 ・玄関から上がると正面がキッチン。左側が居室になっている。現場はその居室の中央のようだ。妙な形のマッサージチェア(にしては縦長なのだが)が中央部に置かれていて、そのわきに大きめのタオルが敷かれていた。先に入った業者の方が敷いておいてくれたものだろう。 ・どんどん臭いが辛くなる。服にも臭いはつくだろうな。多少は予想して、もう捨ててもいいようなナイロンの上下を着ていったのは正解だった。 ・探したかった生命保険や社会保険関係の書類はすぐには見つからず、持ち帰れたのは請求書や督促状ばかりだった。